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意思決定をする時に知っておきたい経済学用語

海に立つ人



人生には意思決定がつきものです。

朝起きてから夜ベッドにもぐりこむまで、選択や決断がつきまといます。

しかし、意思決定に当たって、私たちは感情的になりがちです。あるいは、選択の意味を知らずに判断を下しがちです。

意思決定に関する研究は心理学で盛んですが、(行動)経済学でも様々な研究がされています。

この記事では、私たちが意思決定をするときに役立つ用語を5つピックアップし簡潔に説明します。

関心のある方はチェックしてみてください。



トレード・オフ

exchange

トレード・オフとは、「何かを得るためには、何かをあきらめなければならない」という「あれか、これか」の関係のことです。

一方の利益を取ると、もう一方の利益が減る反比例の関係とも言えます。

 

例えば、プロのミュージシャンになるには、遊ぶ時間や趣味を我慢して、楽器の練習に時間を充てなければなりません。

子育てのためには、仕事に費やす時間をあきらめなければなりません。

昇進のためには、もっと仕事に時間をかける必要があります。

このように「あちらを立てれば、こちらが立たぬ」という関係性がトレード・オフです。

 

トレード・オフが起こるのは、時間や資源が有限であるためです。

もしあなたが神様なら、時間も資源も有限にあります。そのため、トレード・オフは起こりません。

しかし、人間には寿命があり、お金や時間に制限があります。

そのため、人間は常にトレード・オフを迫られています。

選択と集中が重要になるのも、人間が有限の存在だからです。

 

意思決定にはトレード・オフがつきものです。

ある道に進むためには、別のオプションをあきらめなければなりません。

自分にとって大切な価値観は何なのか、普段から考えておくといいですね。

 

機会費用

機会費用とは、ある行動を選んだために得られなかった(最善の)経済的価値のことです。

機会費用は、トレード・オフとセットでよく議論されます。

 

例えば、日給1万円の引っ越しアルバイトをしている学生を考えてみましょう。

彼(女)が8200円のチケットを購入し、ディズニーランドで1日遊んだとします。

この時、アルバイトをしていれば稼げたはずの1万円とチケット代の8200円を合わせた1万8200円が機会費用になります。

したがって、1万8200円以上の価値(リフレッシュ・大切な人と過ごす時間)が無ければ、この学生はディズニーランドへ行くべきではありません。

機会費用より価値が上回る時にのみ、その行動を選ぶべきなのです。

 

意思決定をする時には、機会費用のことを思い出してみてください。

経済学的な正しさは必要ありませんが、大雑把に機会費用を計算してみると損得を考えるのに役立つでしょう。

プロスペクト理論

お札を持つ手

プロスペクト理論とは、「利益と損失が同レベルだと、利益から得る満足度よりも損失による不快感が大きくなる」という人間の感情のアンバランスを説明する理論です。

人間は確率や価値を正しく判断せず、バイアスをかけて判断を下しています。

プロスペクト理論では、こうした歪みを関数を用いて説明します。

関数は難しいので、ここでは関数を使わず例を挙げてみましょう。

 

例えば、株式投資でA社の株を買う場合を考えてみます。

 

含み益:1万円

含み損:1万円

 

上の2つを比較してみてください。

どちらも量的には同じ1万円です。

しかし、含み損の不快感は、含み益の幸福感を上回ります。

人間が、得に比べて、損を過大評価するからです。

そして、出来るだけ損を避けようと行動します。

 

損切りできずに破産する投資家たちを私たちは不思議に思います。

しかし、プロスペクト理論を知っているとなぜ損切りできないのか納得できるはずです。

 

私たちが意思決定を下す時には、プロスペクト理論のことを考えてみる必要があります。

なかなか決断に踏み切れない時、実際には大した損ではないのに、私たちは極端に損を大きく見積もっているかもしれません。

人間は損をしたがらない生き物です。

しかし、上手に損切りをすると、無駄なコストを省いたり、自分が力を注げる部分にもっと力を注ぐことができるようになります。

ネガティブな決断に躊躇する時は、「損して得とれ」ということわざを思い出してみましょう。

 

サンクコスト(埋没費用)とコンコルド効果

プロスペクト理論と合わせて覚えておきたいのが、サンクコストコンコルド効果です。

サンクコストとは、回収できなくなった投資費用を指します。

コンコルド効果とは、サンクコストが意思決定に影響を与え、投資を継続してしまう効果のことです。

 

例えば、人気ラーメン店の順番待ちを考えてみましょう。

人気ラーメン店には長い行列ができますよね。

その行列に並んだばかりなら、「やっぱり別のラーメン店にしよう」と判断するのは簡単です。

では、行列に並んでから30分後に同じ判断ができるでしょうか?

「せっかく長い時間並んだし、もう少し待ってみよう」と考え(実際にはさらに1時間待たされるかも!?)、「他のラーメン店に移る」という選択を思考から除外してしまう人がほとんどでしょう。

このように、それまでにかけた時間(=サンクコスト)に気をとられると、私たちは正しい意思決定ができなくなってしまいます。

 

  • 一向に上達しないスキューバダイビング
  • 独立・開業して1年経つが赤字続きの美容室
  • 1回着ただけなのに捨てられないヴィトンの服
  • 2000万で購入したが、誰も利用してくれない駐車場
  • 3年付き合ったが、とっくに愛想が尽きている恋人

 

サンクコストが足を引っ張る場面は生活の中にあふれています。

最善の意思決定があっても、私たちは無意識にそれを避けてしまいます。

「時にはあきらめることも重要だ」というアドバイスを見聞きすることがあります。

きっと、そのアドバイスは、サンクコストをあきらめることの重要さを私たちに説いているのでしょう。

失敗は失敗として受け入れ、次の一歩を踏み出しましょう。

 

ヒューリスティックス

満点の星空

ここまでいくつかの経済学用語を紹介しました。

経済学の知識を駆使すれば、意思決定は確実に優れたものとなります。

しかし、実際に私たちが意思決定をする場面では、サンクコストやトレード・オフのような便利な用語のことは忘れてしまいます。

代わりに、「何となくこっちがいいよね!」と、直感で判断をしてしまうのが普通ではないでしょうか?

 

このように、経験則や先入観を頼りに判断を下す思考法ヒューリスティックスと言います。

ヒューリスティックスは、ロジカルに筋道立てて考える「アルゴリズム」とは真逆の思考法です。

 

例えば、街で白人を見かけると「外国人」「英語を話しそう」と私たち日本人は考えがちです。

でも、実際には日本生まれの白人かもしれません。

また、英語ではなく、ドイツ語や中国語を話すかもしれません。

このように数ある可能性を限定(無視)して、高速で判断をするのがヒューリスティックスです。

 

「考える」という作業は基本的に面倒くさいです。

まず、当たり前ですが、考えるには時間がかかります。

また、考えると、肉体的にも精神的にも疲れます。

さらに、私たち現代人は、とても忙しいのです。ドレイに労働を押し付け、暇を持て余していた古代ギリシャ人ではありません。

毎日、処理しなければならない課題で頭がいっぱいです。

フライトの時間に間に合うだろうか、明日の会議の資料は14時までに上司に提出だ、税金の支払いが今日までだ、夕食には何を作ろうか、18時前に子どものお迎えをしなきゃ、今日から始まる新ドラマにはどんな俳優が出るんだっけ、などなど。

このように、ずっと頭の中で思考しています。

そこで、思考を倹約し、高速で答えが導き出せるヒューリスティックスが必要になります。

急いで答えを出したい時にアルゴリズムには頼っていられないのです。

 

しかし、重要な意思決定の局面では、ヒューリスティックスに頼るのは危険かもしれません。

ヒューリスティックスは、思考を使わない分エラーも多いからです。

そのため、大切なことを決める時には、積極的にアルゴリズムに頼るべきです。

数学や統計学を駆使し、思考を一つひとつ言語化して、時間をかけてじっくりと判断を下した方がよい結果を生みます。

急がば回れ、です。立ち止まってみると見えるものもあるのです。

 

終わりに

簡単にですが、意思決定に役立ちそうな経済学の用語を紹介しました。

この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。

 



ABOUT ME
てりたま
いつの間にかライターで生きるようになっていた人。真面目半分、不真面目半分で記事を書いてます。