某匿名掲示板で話題になっていたので調査。

7/17の終値は2,279ですね。
ん? そんなにヤバいですかね?
もう少し長いスパンで株価の推移を見てみましょう。

あ……(察し)
一時期6000円を超えていた頃から見ると、およそ3分の1まで株価が下がっています。
「コロナショックがあったのでどの企業も株価が下がった」と言えば確かにそのとおり。しかし、4月から6月の日経の上げで株価を回復させた企業も多いですよね。そのため、「コロナショックがあったから今の株価がある」と安易に結論付け、原因究明を終わらせてしまうのは早急です。
しかし、2279円という数値は、コカコーラやJAL、楽天といった企業より高い株価です。と考えると、UUUMの株価はそこまで悪い数値ではありません。
それなのにUUUMについてここまで騒がれるということは、他にも何か要因があるはず。
今回はUUUMが抱えるリスクについて、簡単に分析してみます。
UUUMは何をしている会社か?
以下、知らない方向け。
UUUMの事業内容については、公式ホームページに記載があります。
UUUMでは、主に次の3つの事業を展開しているようです。
- クリエイターサポート事業…マネジメント、動画制作サポート、オファーなどの提供
- インフルエンサーマーケティング事業……プロモーションプランの提供
- ゲーム、メディア事業……アプリ開発など
特筆すべきは、UUUMではアプリ開発を行っているという点。

サイトで確認したところ約30ものアプリが確認できました。
アプリの内容は、人気YouTuberと絡めたコンテンツが大半を占めます。いくつかは一時期App Storeでよく見かけたものでした。特定のYouTuberのファンがダウンロードするように作っているのでしょう。
UUUM株式会社の問題点
会社について簡単に押さえたので、実際にUUUMが抱えるリスクについて見ていきます。
吉本との提携や、宮崎支社の設立など表面上はイケイケに見えるUUUMですが、どのような問題があるでしょうか。
1.収益構造の問題
UUUMの株価について投資家がやきもきする最大の理由はその収益構造にあります。
下図はIR情報から引っ張ってきた売上高推移です。一番新しい20/5期 4Qの売上高を見ると分かりますが、売上5,693百万円のうち3,493百万円がアドセンス広告です。つまり、売上高のおよそ60%をアドセンスに依存しているわけですね。たしかにヤバい。

アドセンスへの依存度が高すぎるため、アドセンス運営の大本であるGoogleの匙加減ひとつでUUUMの収益は大きく変化します。上場企業であるにも関わらず、資金を生み出す手段が外部企業に存在するという点で極めて不安定な収益構造であると言えます。
ちなみに、今年はコロナウイルスの影響で広告宣伝費を減少させている企業が約6割です。
企業が広告費を減少させれば、当然、Googleがクリエイターに還元できる金額も減少します。そのため、コロナウイルスの影響が長期にわたって続けば、UUUMの収益は深刻なダメージを受けることが予想されます。
実際、YouTubeのご意見番シバター氏の動画によると、広告収入が落ちているそうです。
売上高の第2位である「広告(企業とのタイアップ案件)」に関しても、アドセンスと事情は同じです。つまり、コロナ下で企業が広告費を割けなくなり、タイアップ案件も減少するのは容易に予測できます。
「クリエイターサポートその他」による売上高・アプリ等の「自社サービス」が占める売上高は、全体に対して微々たるものです。したがって、UUUMの収益構造は不安定であると結論づけることができます。
また、直近の3年間で収益構造がほとんど変化していない点も心配な点です。
アドセンスに収益を依存するのが危険ということは、素人目線でもわかります。
そのため、タイアップ案件をもっと増やしたり、クリエイターサポートその他による売上高をもっと増やしたりする努力をUUUMはするべきでした。つまり、アドセンスへの依存度を下げ、マネタイズの手段を外部から内部へと移す作業ですね。これを3年かけてコツコツやるべきだったのです。
しかし、アドセンスに依存している状況が3年かけても変わっていないので、投資家目線では「大丈夫か、この企業?」「企業内にリスク管理を行う人物はいないのか?」と思ってしまうのも無理はありません。
2.脱退者多すぎ問題
今年だけでも大勢の方がUUUMを止めています。
- えっちゃんねる 2020年6月20日
- エミリン 2020年6月1日
- 関根理沙 2020年4月3日
- ハイサイ探偵団 2020年4月10日
- 木下ゆうか 2020年2月1日
- ほしのこCH. 2020年6月1日
- JULIDY. 2020年6月1日
- マリリン 2020年6月1日
今年に限定しなければ、「すしらーめんりく」や「ブレイクスルー佐々木」など大物YouTuberもこれまでに多数辞めています。
上はブレイクスルー佐々木氏の動画です。辞めた理由を赤裸々に語っています。
もちろん、動画はあくまで一個人の例であり、クリエイターがUUUMを辞める要因は人それぞれです。
- 広告収益の20%をマネジメント料としてUUUMに徴収され、割に合わないから。
- クリエイターの気質がそもそも組織に合わないから。
- UUUMを通して案件を獲得する必要がないから。
- 再生数アップなどYouTubeに対するノウハウがないから。
- 名が売れて、UUUMに所属する意義がなくなったから。
とりわけ大きな要因は広告収益の20%がUUUMにもっていかれるという点でしょう。
20%のマネジメント料は、パーセンテージで決定されるので固定額ではありません。そのため、クリエイターの広告収入が増えれば増えるほど、事務所が持っていく金額が大きくなります。
例えば、あるクリエイターの広告収入が1,000万円であれば、事務所の取り分は200万円だけです。しかし、広告収入が1億円の場合、事務所の取り分は2,000万円にもなります。差額の1,800万円分の恩恵が受けられるなら、クリエイターも事務所に所属する意義がありますが、実際にはその恩恵を得られていないため脱退という道を選んでいるものと推測できます。
また、金銭的な問題だけでなく、企業風土や所属クリエイターからの会社に対する不信感も脱退を後押ししているのでしょう。
芸能人が参入し、YouTubeを取り巻く状況が変わってきています。とはいえ、YouTube活動は芸能活動と違い、個人で完結させられるものです。芸能人のように事務所に「干される」こともありませんし、UUUM事務所とクリエイターのパワーバランスでは、クリエイターに軍配が上がります(YouTube活動を止められるのは、そもそもYouTube運営だけ)。そのため、現在のような脱退ラッシュが起きているのかもしれません。
3.チャンネル登録者数で見るUUUM影響力の低下
UUUMは、数年前と比べるとYouTube内で影響力が低下しています。
2018年5月期通期の決算説明資料と、2020年5月通期の決算説明資料を見比べると、違いが明らかです。
以下の2つの画像を見比べてみてください。


上の画像が2018年の資料、下の画像が2020年の資料からの抜粋です。
2018年には登録者総数ランキングTOP10のうち8グループがUUUM所属クリエイターでしたが、2020年では4グループまで減少しています。
また、TOP100に所属しているクリエイターの数も2018年には37グループだったのが、2020年には24グループと減少傾向にあります。
さらに言及すべき点として、TOP100にランキングしている「東海オンエアの控え室」「はじめしゃちょー2」「はじめしゃちょーの畑」「HIKAKIN」などはいわゆるサブアカウントであるため、実質的に活躍しているUUUMクリエイターの数はランキング数よりも少ないと考えられます。
先ほど指摘したとおり、UUUMから脱退が相次ぎ、結果としてランクインするクリエイターが減っているだけでなく、今後ますます多くの芸能人が参入してくるとすると、さらにランキングが変動する可能性は否めません。
まとめ
簡単にUUUMについて分析してみましたが、株価が下がって騒がれるのも分かる気がします。
しかし、UUUM側としても手をこまねいて見ているだけというのはあり得ないですし、株主側もあまり騒ぐ必要はないと思います。今後の動向を見て、本当にヤバいのかどうか判断しても遅くないですね。