esportsやプロリーグが盛り上がっていますが、これらの話題に関連して最近よく聞くのがJeSU(ジェス)という組織の問題です。
「胡散臭い」という話があちこちで上がっているので、少し気になって調べてみました。
結論から言うと、やはり「胡散臭い」組織でした。
当記事では、JeSUという組織について簡単に知識を押さえるとともに、私がJeSUに対して「胡散臭い」と思ったポイントを挙げて説明してみたいと思います。
Contents
JeSUとは何か?
まずJeSUという組織について説明します。
JeSU……一般社団法人eスポーツ連合(JAPAN ESPORTS UNION)
社団法人なので株式会社と異なり非営利な組織です。
そのため剰余金を団体の構成員に分配することはできません。
- 一般社団法人日本eスポーツ協会
- 一般社団法人e-sports促進機構
- 一般社団法人日本eスポーツ連盟
以前に存在した以上3つの組織が1つにまとまることで2018年2月1日に誕生しました。
JeSUが設立された目的
JeSUが設立された目的については、公式ホームページに記載があります。
- eスポーツ振興に関する調査、研究、啓発
- eスポーツ競技大会の普及
- eスポーツ競技大会におけるプロライセンスの発行と大会の認定
- eスポーツ選手育成に関する支援
- eスポーツに関する関係各所との連携
以上5つのテーマをもって設立された団体がJeSUです。
要するにJeSUは、eスポーツに関わる様々な活動を行い、日本のeスポーツ業界をもっと盛り上げようとしているわけです。
これだけ聞くと、至極真っ当な組織に見えますよね。
ところが、どうにもきな臭い部分があるようです。
プロライセンス問題
うさん臭さの原因は、JeSUが発行するプロライセンスにあります。
JeSUの発行するプロライセンスがなければ、eスポーツ大会で入賞しても、本来得るべき賞金を得ることができなくなります。
ももち選手の事件
プロゲーマーのももち選手が2018年12月の大会で7位に入賞した際に、本来受け取るべき賞金を受け取ることができないという問題が発生しました。
本大会において、ももち選手は50万円を受け取るはずでした。
しかし、ももち選手がプロラインセンスの取得を拒否していたために、実際には10万円しか受け取れなかったのです。
「団体がピンハネしている」「ヤクザ」「胡散臭い」と言われるのは、こうした問題が起きているからでしょう。
ももち選手の意見
少し本筋から離れますが、ももち選手がなぜプロライセンスを拒否したのか本人の言葉を引用します。
非常に熱く真摯な言葉です。
私自身、ももち選手の言葉にとても共感しました。
プロライセンス規約の怪しさ
実はJeSUによるプロライセンスの規約は公式サイトで誰でも読むことができます。
一見するとどこにでもありそうな普通の規約なのですが、気になったポイントを挙げてみます。
ライセンス取得にお金がかかる
ライセンス=免許なので、プロライセンスを取得するのにお金がかかります。
7.5 JeSU 公認プロライセンス発行時には、発行手数料として、以下に定める費用を
支払うものとする。
7.5.1 「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」 5000 円
7.5.2 「ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンス」 3000 円
7.5.3 「ジャパン・eスポーツ・チームライセンス」 5000 円×チーム内の人
数(人数は IP ホルダーと JeSU が相談の上、決めるものとする。)
しかも2年毎に更新で、更新の際にはお金がかかります(車の免許みたい!?)
また、ジュニアライセンスからプロライセンスに切り替える際にも発行手数料が要求され、都合よく団体がお金儲けできるシステムになっています。
8 JeSU 公認プロライセンスの更新
8.1 JeSU 公認プロライセンス更新は、発行日から 2 年ごとに行うものとする。
8.2 更新時には発行手数料と同額の費用を支払うものとする。
8.3 更新時にはeラーニングによる講習を受けるものとする。
8.4 ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンスからジャパン・eスポーツ・プロ
ライセンスへの切り替え時においては、ジャパン・eスポーツ・プロライセン
スと同額の発行手数料を支払うものとする。
そもそも「プロスポーツ選手」とは?
eスポーツと対比させられる普通のスポーツ(野球やサッカーなど)では、特別なライセンス=資格は必要なのでしょうか?
Wikipediaの「プロフェッショナルスポーツ」の「プロスポーツ選手になるための条件」では、以下のように説明されています。
プロスポーツ選手になるためには資格は不要であるが、競技を主催する団体やスポンサーにプロとしての実力を認めてもらう必要がある。以下は一例である。
- 入団・契約型:試合を開催する団体に加盟する個々のチームとプロ契約すればプロになれるもの
- 日本プロサッカーリーグ主催のサッカーや日本野球機構主催の野球など
- テスト型:試合を主催する団体の定める選考を通過する必要がある物
- 日本ボクシングコミッション主催のボクシングや日本プロゴルフ協会・日本女子プロゴルフ協会主催のゴルフ、サーフィン、ソフトダーツ、など
- 養成型:試合を開催する団体の研修所を卒業する必要があるもの
- 公営競技(競馬、競輪、競艇、オートレース)
- 実績型:アマチュアとして試合に参加し、定められた順位に入ることでプロ資格を得られる物
- サーフィンなど。
- 宣言型:プロ宣言し、スポンサーやチームと個別に契約するもの。試合を開催する団体はプロアマの区別をしていない
- 卓球、ゴルフ、水泳、陸上、モータースポーツなど
個人的な意見ですが、eスポーツが「スポーツ」を自称するのであれば、他のスポーツ種目のように資格は不要であるとして、ライセンス制度は取っ払うのが妥当であるように思います。
また、eスポーツ選手は大会で好成績を重ね「プロ」を自称し、スポンサーを得ることでプロになるのがこれまでの流れです。
なので、上の引用で言えば、eスポーツ選手は実績型や宣言型に分類され、特別なライセンスはやはり必要ないはずです。
私はスポーツの専門家ではないただのブロガーなので、大きな声で批判はできません。
しかし、「スポーツとは何か?」「本当にこのような組織やシステムが必要なのか?」という点を突き詰めて考えてみると、「胡散臭い」と言われるのにもそれなりの理由があるのだと納得できます。
今後のJeSUはどうなる?
批判されながらも、JeSUの存在は空気のように当たり前になり、継続していくと思います。
例えば、音楽界隈におけるJASRACも権利問題でしばしば批判されていますが、何十年も継続しています。
一度システムができあがってしまうと、そのシステムを覆すことは難しいですし、ルールができあがってしまった後はそれに従っていかざるを得ないでしょう。
こうした枠組みにとらわれるのが嫌なプロゲーマーの方は、日本ではなく海外を舞台として活躍するほうが幸せかもしれません。
ゲーム界隈の植民地支配
とはいえ、突然できた組織がそれまでのゲームコミュニティーを無視してあれこれ言い出すのは、あまり気持ちのいいものではありません。
見知らぬ外部の人間がやってきていきなりルールを押し付けるというのはさながら植民地支配を彷彿とさせるものであり、ももち選手のように真摯にゲームに取り組んでいる人や童心を忘れずにゲームを楽しみたい人にとってJeSUのような組織に不快感を覚える人がいるのは当然です。
これまで適当に運営されていたeスポーツの大会がJeSUによって制度化され「スポーツらしさ」を獲得していくのは素晴らしいと思いますが、頭では納得できても心では納得できないゲームユーザーも多く、こうした感情的な問題についてもJeSUにはしっかりと向き合ってもらいたいと思います。