アート

日本の美術館の多くはなぜ写真撮影が禁止なのか




この前シンガポールに旅行して、美術館をいくつか巡りました。

それで驚いたのが、館内でアート作品の写真撮影が禁止されていなかったことです。

日本では一部の美術館を除き、多くの美術館で写真撮影が禁止されますよね。

シンガポールでは、どの美術館も写真撮影がOKでした。

厳密に言えば、シンガポールの美術館でもフラッシュ撮影は禁止でしたが、普通に動画を撮ったり写真を撮影したりする分には、何も言われませんでした。

おかげで、アートの本でよく見る有名な作品も写真撮影ができました。

 


撮影禁止は世界共通なのか調べてみた

「美術館での写真撮影OKはシンガポールだけの独特なルールか?」と疑問に思い、他の国ではどうなのか調べてみました。

調べたところ、どうやらイギリスの大英博物館やフランスのルーブル美術館、アメリカのメトロポリタン美術館等の有名な美術館でも写真撮影はOKとのこと。

 

おやおや、撮影禁止はやっぱり日本だけのガラパゴスルールじゃないですか・・・。

 

と思ったら、「日本では撮影できないというのは嘘。みんなが見に行くのは大半が企画展で、企画展の作品は美術館所蔵のアートではなく、借り物だから撮影できない。美術館が所有している常設展の作品なら撮影できる」という意見もありました。

でも、私がシンガポールで見たプログラムの一つにMINIMALISMという企画展がありましたが、普通に写真撮影はOKでした(ドナルド・ジャッドやマーク・ロスコの作品も余すことなく写真に収めてきました)。

となると、「企画展だから写真撮影はだめ」ということでは無さそうです(もちろん、一つの情報だけで断定することはできませんが)。

 

「著作権が問題だから」という意見もありましたが、著作権法第30条によると私的利用(家に帰ってから写真を眺める)に限るなら問題はありません。

確かに、原作者が著作権を所有しているため、アーティストからの許諾がなければ撮影ができない作品もあるでしょう。

しかし、それでも「全ての作品について写真撮影禁止」という美術館のルールは適用範囲が広すぎます(また、既に亡くなっており、著作権が切れたアーティストの作品についても撮影禁止というのはおかしいです)。

また、著作権については、日本と同じくらい欧米が、あるいは日本より欧米の方が厳しそうですし、もし著作権に抵触するなら欧米の方が真っ先に「写真撮影は禁止」というルールを取り入れるはずです。

 

さらに不思議なのが、屋外のアート作品やインスタレーションは写真撮影がOKなことです。

例えば、渋谷駅の「明日の神話」(岡本太郎)や六本木ヒルズの「ママン」(ルイーズ・ブルジョワ)、あるいは金沢21世紀美術館の周りにある作品群を撮影しても誰も何も言いませんよね?

なぜ美術館内の作品は撮影がダメで、美術館外はOKなのでしょう?

もし美術館内のある作品を新宿駅に飾ったとしたら、撮影はOKになるのでしょうか?

壁の有無でルールがガラッと変わるのが不思議です。

 

アートはみんなのもの

美術館は、アート作品の状態を維持・管理する上で非常に重要な役割を果たしています。

ですから、美術館が写真撮影をある程度抑制する権利を持つのは当然です。

 

しかし一方で、アーティストがパブリックな場に美術作品を公開した以上、アート作品は基本的に「みんなのもの」です。

例えば、歌・小説・映画等のコンテンツは誰でもアクセスが可能ですし、ダウンロードや購入によって、「いつでも」楽しむことができます。

 

ですから、アート作品についても「いつでも」楽しめるようにするために、写真撮影はある程度まで許容されるべきです。

「無料で利用したい」とは言いませんが、海外美術館の現状とあわせて考えると、入場料には著作物利用料も入っていると考えるのが合理的です。

 

そもそも、アートというのは、コミュニケーションの道具・創造のための道具です。

歌や映画のことを考えてもらえれば分かると思いますが、私たちは一緒に歌を歌ったり、映画について感想を述べあったりすることでコミュニケーションを図ることができます。

美術館で展示されている作品群も歌や映画と同様、一緒に鑑賞して感想を話したり、鑑賞を通じて思考を巡らせることでコミュニケーションに用いることができます。

また、クリエイターは、アート作品を鑑賞することでインスピレーションを膨らませ、オリジナル作品を作ることもできます。

アートが持つこれらの機能を妨げないためにも、館内での写真撮影を許容しておき、アートをオープンソース化しておくことは今後ますます重要になってきます。

 

アートの隠蔽

昔、美術批評家(名前を忘れました)の本を読んだ時に、「日本美術の所有者は美術品を隠蔽するのが大好きで、特別な来客があった時にだけ、倉庫からお気に入りの骨董や絵画を持ち出して来て見せる」と書いてありました。

日本美術の所蔵についてのこの論評が正確な描写だとすると、アート作品の所有者=美術館は、やはり出来るだけ作品を隠蔽したいのかも知れません。

つまり、アート所有者の隠蔽の慣習は現代日本にあっても形を変えて続いているのです。

しかし、平成も終わるというこの時代に、いつまでも旧来の閉鎖性を引きずっているのはなんだか「ダサい」と思います。

 

もしかしてシャッター音が原因?

なぜ日本の美術館の大半は写真撮影が禁止なのか?

この記事を書いていて一つ思い当たる節がありました。

それは、日本のスマホ特有のシャッター音が原因ではないか? ということです。

 

日本のスマホは撮影の際にカシャカシャと音を立てます。

この撮影音が静かに鑑賞を楽しみたい人の邪魔になるので、美術館内では写真撮影が禁止なのではないかという仮説です。

 

撮影の際に不快な音が出るのは日本のスマホだけです。

例えば、同じiPhoneであっても、日本規格のものだけ音が出ます。

海外旅行や海外出張の経験がある人は皆、日本人だけが音を立てて写真撮影をしていることに気づき、人知れず消音カメラアプリを導入したり海外版のスマホに切り替えたりしています。

 

日本のガラパゴスっぷりは美術館だけでなく、スマホのカメラでも発揮されているのです。

しかも、驚くべきことに、スマホカメラのシャッター音には法律上のルールはありません。

業者が自主規制としてシャッター音を導入しているだけなのです。

 

では、なぜシャッター音が導入されるきっかけは何なのでしょう?

この記事によると田代まさしが原因とのこと(田代まさしは、2000年に痴漢で逮捕された芸能人です。)。

とすると、田代まさしの盗撮事件が巡り巡って、美術館での写真撮影が禁止されている?(暴論)

仮にこれが真実だとすれば、それこそバタフライ・エフェクトのような話です(笑)。

冗談めかして書きましたが、「それなら田代まさしが痴漢犯罪を犯す前の時代、つまり2000年代以前の美術館ではカメラでの写真撮影OKだったの?」など、面倒な問題が発生してきます。

ポスト田代まさしの美術館とプレ田代まさしの美術館ですよ。もうわけ分かんないですね、これ。

こればかりは美術館の関係者に聞かないと分からないですし、調べるのに相当な労力がかかりそうなので、調べるのは止めましょう(笑)。



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てりたま
いつの間にかライターで生きるようになっていた人。真面目半分、不真面目半分で記事を書いてます。