トレードに対する思考

同じひとつのチャートを見ていても、見ている世界はトレーダーによって異なります。
ここでは、AさんとBさん、2人のトレーダーについて考えてみましょう。
2人はどちらも、トレードの成功確率を計算するプログラムを使ってトレードをしています。
この確率判別プログラムをもとにし、
Aさんは、利益が出る確率が70パーセントの場所を選び、1か月の間トレードをしました。
Bさんは、利益が出る確率が40パーセントの場所を選び、1か月の間トレードをしました。
結果、Aさん・Bさんは双方に利益を得ました。
しかし、2人の金額には非常に大きな差がついていました。結果的には、Bさんの方が大きく儲かっていたのです。
これは直感に反します。普通に考えたら、Aさんの方が利益が出るはずです。なぜなら、Bさんよりも成功確率の高いポイントでトレードをしているからです。
なぜこのようなことが起きたのでしょうか。
実はBさんは確率以外のことも考えていました。それが期待値です。
Bさんは上昇トレンドになる確率が高いと考えた後、期待値についても考えました。
「確かにトレードがうまくいく確率は高い方がいい。そういうポイントを選んでトレードをするべきだろう。
しかし、期待値はどうだろうか。仮に確率が70パーセントだとしても、期待値が小さかったら(あるいはマイナスだったら)意味がないではないか。
反対に確率が30パーセントでも、期待値が大きかったら、そのポイントでトレードをした方がいい。」
Bさんはこのように考えて、トレードしたのです。
期待値と確率
AさんとBさんの例でわかるように、期待値と確率を混同すると、大きな利益をとり逃すことになります。
確率偏重のトレードをしていると、期待値というもう一つの要素に意識を向けられなくなります。
「コツコツドカンが多い」
「なぜか利益が増えていかない」
「数学的に考えているのに、マイナスが膨らむばかり」
トレードが思い通りになっていない人は、もしかすると確率「だけ」に頼ってトレードをしているのではないでしょうか。
期待値を考えていないため、「成功確率が80パーセント・期待値がマイナス」のポイントを選んでトレードをしてしまっているのかもしれません。あるいは、「期待値が非常に大きいのに、確率が30パーセントしかないポイント」でのトレードを避けてしまっているのでしょう。
ですから、トレードがうまくいっていない人は、期待値と確率、2つの軸をもってトレードを考える必要があります。
期待値を考えることのできるトレーダーは、仮に確率が10パーセントしか無くても期待値が正であれば、躊躇なくトレードを行います。
リバモア・ソロス・BNF等々挙げれば枚挙にいとまはありませんが、優れたトレーダーは、意識・無意識の有無に関わらず、必ずこの2軸について理解してトレードをしています。
期待値に関する嗅覚が並みではないのです。
「確率的思考が重要である」とトレードの世界ではたびたび言われます。
大数の法則やら反復やら考えるべきことはたくさんあります。
だけど、本当の意味で確率的思考をするためには、期待値のことを忘れてはいけません。
「私は確率的思考を理解している」と豪語する人の中で本当に確率的思考ができている人は少ないと言われます。
その原因のひとつには期待値に対する理解の低さがあるのでしょう。
当記事の内容についてもっと詳しく知りたければ、ナシーム・タレブの『まぐれ』を読んでみてください。非常に秀逸な内容なのでおすすめです。読後は明らかにトレードの質が変わりますよ。